特別支援学級の生徒の交流学級での係活動、座席

ある中学校の特別支援学級の生徒たちは、前述のように、基本的には、

朝の会、帰りの会、学活、総合、音楽、道徳

の時間を交流しました。

 

今回は、交流学級での対応について、お話ししたいと思います。

 

○係活動

各学級には係活動があります。多くの場合、特別支援学級の生徒は係に入らないか、入ったとしても名前だけという場合が多いと思います。私がそれまで経験した学校もそうでした。

ある交流学級の先生が、支援級の生徒たちが、必ず朝と帰りの会に交流してくることを利用して、配布物係にしてくれました。

特別支援学級の教室から交流学級の教室に行くには、その学校では、職員室の近くを通る必要があります。どの学校にもあるかと思いますが、職員室前には、各学級に配布するプリント類を入れた「配布ロッカー」があります。生徒たちが朝の会や帰りの会に交流するためにその場所を通ったとき、そこに配布物があったら、交流級の教室に運ぶという役割です。

最初は戸惑う生徒たちでしたが、慣れてくると、朝や帰りの会の前には必ず配布物の棚をチェックすることが習慣付いていきました。配布物を持って行けば、交流級の先生が声をかけてくれます。それも励みになったことでしょう。係として、交流級に貢献できるという体験は、生徒自身にとっても、やりがいのあることだったのではないでしょうか。仕事があるから、交流級に行かなくてはいけません。交流を嫌がっていたら、その学級が困ってしまうから、いかなくてはならない状況もできました。

この配布物係は、その後、その学年の他の学級、違う学年にも広がっていきました。

そういう係を考えていただいた交流学級の先生には、本当に頭が下がります。

学校全体で、特別支援学級の生徒のことも見てくれた、一つのあらわれだと思います。

 

○座席

次に、座席についてです。

特別支援学級の生徒の座席について、学校によって、先生によって、考え方が違うんだなあ、と、いくつかの学校をまわって、思いました。

多くの場合は、一番前とか、一番後とか、最初から端に決めていた先生もいらっしゃいました。常に学級にいるわけではないこと、介助がつきやすいことなどを考えると、みなさんよかれと思って、他の生徒の列の後ろにすることも多かったのだと思います。

確かに、介助する側にしてみると、その方が便利ですが、生徒自身にとっては、どうだったのでしょうか。

その中学校でも、最初は列の最後にどのクラスもありました。

ところが、交流がすすんでいくと、だんだん支援級の生徒の席が、生徒たちの後ろの座席から、列の中に普通に置かれる例が多く見られるようになっていきました。交流学級の席替えをするときに、特別支援学級の生徒の座席も、他の生徒と同じように替えてくれているのです。もちろん、席替えの際には特別支援学級の担任にも相談してのことです。

単に座席の話なのかもしれませんが、こういうところからも、支援級の生徒と交流級の生徒の「壁」が取り払われていくような気がしました。同じ学級の一員であるという意識が、交流級の担任、生徒に育ったからなのだと思うことができました。この時の先生方の支援級の生徒を交流級の生徒と分け隔てなく扱う姿に、学ぶべきもが多くあるように感じました。

 

いま考えると、学校全体にインクルーシブ教育の雰囲気が漂っていたんだな、と思います。


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