ある中学校の特別支援学級で行った校外学習の実践報告、5回目です。
前回はしおりの作成を行った話でした。
ここまでの指導は、通常の学級の校外学習の前にも、中学校では行われている指導だと思います。
今回は、特別支援学級独特の内容かもしれません。「練習」です。
その学校から目的地の水族館に行くには、バスに乗り、最寄りの駅に出、そこから電車に乗り、一回乗り換えて向かう必要があります。
このバスと電車の乗り方の練習をしたのです。
まず、保護者に対して、バスや電車に乗る際に、療育手帳は提示するか、ICカードを利用するかという確認と、一人で運賃の支払いができるかという調査を実施し、実態を把握しました。学習のため、ICカードは使わず現金でできれば支払ってほしいということは、連絡帳等で知らせました。
その調査をもとに、学校では、だれがどこでいくら支払うのか、一覧表を指導者用に作成しました。
そして、次は、支払い練習です。
バスについては、運賃箱と整理券発券機の模型を、電車については、自動券売機の模型を、それぞれ段ボール箱で作りました。
バスに乗る練習では、教室にイスを並べてバスの中に見立てました。
乗る前には模型の硬貨を一人ひとりに持たせました。
乗車は、一人ひとりが整理券発券機から整理券をとる練習から始めました。
整理券をとったら、座席を想定したイスに座ります。
バスの中では騒がないということを確認しました。
到着するバス停を告げるアナウンスへの対応も指導しました。(行きは終点なので降車ブザーを押しませんが、帰りは押す必要がありました)
バスの正面に表示される運賃表の見方も説明しましたが、これは難しかったので、1回指導した後は、その都度表を見て確認することをやめ、「運賃は○○円」いう前提で学習を進めることにしました。硬貨を運賃分準備する練習を、生徒によっては重ねました。
目的地に到着する前に運賃を準備する。
バスが停車してから立ち上がる。
そして、運賃箱に整理券と運賃を入れながら、一言運転手に「ありがとうございます」と声をかけるように指導しました。療育手帳を見せるものは運賃を支払いながら見せることも指導しました。
この一連の流れを数回練習しました。
できる生徒には簡単な内容だったようですが、運賃と一緒に整理券を入れるなど細かいことは、よく分かっていない生徒がいました。回数を重ねると、一人でできるように、みな、なっていきました。
電車に乗る練習では、まず、下見の際撮影してきた「駅に貼ってある運賃表」をテレビ画面に映し、画面を見ながら、いくら必要なのか読み取る練習を行いました。このスキルは、将来社会に出たときも大切なことのように思います。
次に、自動券売機を使って切符を購入するには、どこにお金を入れてどのボタンを押せばいいのかということを練習しました。
自動券売機はタッチパネルなので、実際に撮影してきた自動券売機の画面を印刷して段ボール箱にはり、具体的にどのボタンを押すかも含めて練習しました。
段ボール箱で作った券売機でしたが、みんなおもしろがって練習していました。
切符を買ったら、机やイスを使って作った改札を通り抜ける練習もしました。乗る時には切符を機械に入れ、それを離れたところで受け取る。降りる時は切符を機械に入れ、そのまま通る、ということを何回か練習しました。
バスや電車に乗る練習は、遊び感覚で何回か練習しました。模型でやるだけでは習熟は難しいと思います。でも、練習をしないのと、練習をしたのとでは、大きく違うのではないかと思います。いかに、一人でできる力を育てていくかが大切なのだと思います。当日大人が支払ったり、大人が一つ一つ指示したのでは、何の学びにもなりません。
実際、校外学習当日、ほぼ全員の生徒が、バスや電車の支払いを一人で行うことができました。
帰りの駅で、運賃表を見上げながら、自分たちで降りる駅を探し、運賃を話し合っている姿を見たときのちょっとした感動は、今でも私の心に残っています。