私が勤務する中学校でも、文化祭が行われました。
勤務校は合唱コンクールが中心で、参加した特別支援学級の生徒たちは、交流する学級の一員として、ステージの上で、堂々と発表することができました。
本校と同様に合唱コンクール主体の文化祭が行われている学校が、全国にどのくらいあるのかは知りませんが、今回は、そういう文化祭に対する特別支援学級の取り組みについて、考えたいと思います。
○なぜ、交流する学級の一員として合唱に参加するのか
特別支援学級の生徒の中には、交流したがらない生徒、情緒的に不安定になって交流できない生徒、明らかに合唱のじゃまをしてしまうような生徒など、様々だと思います。
ですから、その生徒の状況によって、対応は異なるのは言うまでもありません。
ですが、基本としては、特別支援学級の生徒は、交流する通常の学級の一員として、合唱に参加する、ということがいいと思います。
特別支援学級の生徒は、進路として、特別支援学校やサポート校などを選ぶものが多いのではないでしょうか。
そうすると、通常の学級の生徒たちとともに歌うという経験は、中学校が最後になるかもしれません。
そういう大切な機会である、ということがひとつ。
それに、通常の中学校に通っているからには、その学校の文化祭に参加するというのは、当然の権利です。学級集団の中で合唱を作る ー それぞれの学級の中で様々なドラマがあるでしょう ー そういう輪の中にいるということは、人生の中で、かけがえのない経験なのではないでしょうか。
文化祭を行うということは、学校は、その過程を通じて、いろいろな経験をさせようとしています。そういう、「学校が準備している学びの機会」の中に、どうして、特別支援学級の生徒だからといって仲間に入れないなんて選択があるのでしょうか。
学級の中に特別支援学級の生徒がいて、その生徒とともに、ひとつの合唱を作り上げる。そういう経験を、通常の学級の生徒に経験させることも、たいへん重要です。
特別支援学級の生徒にとっても、通常の学級の生徒にとっても、この経験は、かけがえのないものとなるのです。そして、そういう「学び」をすることは、中学校で行われなければいけないことでもあるのです。
○そのために何が必要か
学級の中に、特別支援学級の生徒が加わり、ともに合唱をする。
そのためには、学校が必要な環境設定をしていかなくてはいけません。
まずは、特別支援学級の生徒が合唱に参加することを当たり前のこととして捉えること。
特別支援学級の生徒や保護者に希望をとるというような問題ではありません。
参加するのが当然という立場を、通常の学級の生徒、すべての先生や保護者など、学校関係者が全員共通理解を図る必要があります。そういう学校経営が必要です。
次に、通常の学級の生徒と同様な練習の機会、場面が設定されること。
合唱の練習は、音楽の時間、学校として割り振られた時間の練習の他、昼休みや放課後等の学級の自主的な練習もあります。
そのどれもに、特別支援学級の生徒も通常の学級の生徒と同じように参加できることが、保証されるべきです。通常の学級の生徒、教員の意識が大切です。いなかったら呼びに行くというような生徒の配慮を引き出す担任の指導も必要です。そういう指導が行われるように、管理職や主任が担任を指導しなくてはいけません。
そして、文化祭自体の運営が、特別支援学級を大切にしていること
学校によっては、合唱で「賞」を出すところもあると思います。
審査の中で、特別支援学級に対する配慮が必要です。
生徒が不適切な行為(姿勢が乱れたり、声が乱れたり)しても、それは審査に入れない。
特別支援学級の生徒も含め、学級全体で協力して練習、本番に取り組んでいるような姿を適切に評価する。
例えば、これらのようなことが考えられます。
座席についても、交流する学級の中にもきちんと席がある。必要に応じて利用できる別の席もある。こういう配慮も必要になってくるでしょう。
行事の中に適切な配慮があると、生徒たちも安心して参加できるものと思います。
通常の学級の生徒と特別支援を必要とする生徒がともにひとつの行事を作る。繰り返しになりますが、その過程を通じて、それぞれが学ぶことはとても大きいと思います。
そのためには、学校全体の理解と協力、学校を動かしている方々の指導が、たいへん重要になっています。
そういうインクルーシブな学校が、広がっていくといいな、と思います。