特別支援学級における「支援のポイント」

ある中学校で、年度当初に職員会議で提案した「支援のポイント」という資料です。

介助員さん方にも配布しました。

中学校の特別支援学級の生徒の支援について、簡単に整理したものです。

実際はこの通り支援できませんでしたが、指導に悩んだときは常にここに戻るようにしながら、皆ですすめていったものです。

参考までにご覧ください。

 

 

一 穏やかな雰囲気で生徒に対応しましょう。

・生徒にとって、静かで安心できる環境作りを心がけましょう。
・低いトーンで、大きすぎない声を心がけましょう。
・大きい声を出していいのは、命や人権、安全に関わるような時だけと心にとめておきましょう。

 

二 お互いの思いやりの気持ちを育てましょう。

・職員も生徒も、「くん、さん」づけが心がけられるよう、言葉がけしましょう。
・相手を傷つけない適切な言葉遣いを、例示してあげましょう。
・困っている人がいたら積極的に手助けする気持ち、がんばっている人をすすんでほめてあげる気持ち、何かしてもらったら「ありがとう」と言える気持ちを育てていきましょう。そのためには、生徒が協力する場面を意識的に作っていきましょう。

 

三 将来の自立を思いえがいた支援をしましょう。

・大人が代わりにやったり、すぐに指示をしたりせずに、生徒が自分からするのを待ってみましょう。必要があれば、自分から気づいて動けるように合図(キーワード、指さし等)をしてみましょう。
・自分で時計を見て、行動できるように支援しましょう。移動や交流は介助者が連れて行くのではないので、「行こう」と声かけはせず、「時計を見てごらん。次は何かな。」などと声かけし、本人が主体的に行動できるようにしましょう。(移動、交流の時は、3分前に学級を出られるように)
・できなかったときは、「次はできるといいね」と、希望がもてる話し方で接しましょう。

 

四 生徒が安心した学校生活を送ることができるようにしましょう。

・言葉がけをするとき、「○○じゃないよ」「○○はダメだよ」と頭から否定するのではなく、「○○と思ったんだね」「○○したいんだね」などと、まずは肯定的に受けとめましょう。その後で、「これでいいのかな」などと、考えさせましょう。生徒が「思ってしまう思い」はそのまま認めた上で、新しく「○○した方がいい」「○○したい」などの望ましい思いを作っていくのがポイントです。
・生徒によっては、無意識のうちに相手を怒らせるような行動に出てしまうときがあります。生徒の行動に怒りたくなったときは、そういう相手の無意識に乗ってしまったんだということを思い出し、冷静になりましょう。その場はどう行動すべきか気づかせ、「これからはできるといいね」など、落ち着いて言葉をかけましょう。
・ルール(守らなければならないこと)は事前に示すようにし、守れなかったときはしかるのではなく、そのルールを守った方がいいことに気づかせ、「これからは守れるといいね」と落ち着いて話しましょう。「そのくらい言わなくてもわかっているはずだ」という大人の思いこみは捨ててください。守れないことが多いときは、保護者(施設)を交えて話し合います。
・大人がみんなで生徒たちに「勇気づけ」できるように、意識していきましょう。失敗した後にダメ出しすると「勇気くじき」になります。失敗が予想されたら、その前に失敗しないような声かけをしましょう。「勇気づけ」には、生徒を一人の人間として尊敬し信頼する姿勢が大切です。

 

五 指示は短く、一度に一つだけ、視覚にも訴えましょう。

・一度に一つだけ指示する。一度に二つ以上のことを言われると混乱してしまう場合があります。
・指示は短く。こちらはわかりやすくするつもりの説明も、長い説明は理解できないことがあります。
・言葉だけでなく、視覚にも訴える。目からの情報の方が分かりやすいことがあります。
・簡潔に理由を述べる。どうしてそうするのかを示すことが、次につながります。

 

六 「勇気づけ」を心がけましょう。

・「ほめる」こと、「罰する」こと、その他「えらい」「すごい」と言った言葉がけは、上の立場にいる者が下の立場にいる者への評価です。このような評価(外発的動機付け)に慣れてしまうと、ほめられなければやらない、怒られると怖いからやるなどという生徒を育ててしまいます。そこで、横の関係に基づいて、生徒が自力で解決できるように支えていく「勇気づけ」の支援をめざしましょう。
・まずは、生徒に対する尊敬と信頼が大切です。「○○をしたからいい子」ではなく、どんな行動をしたとしても、その生徒を人間として尊敬し、信頼していく姿勢を大人が持ちましょう。
・生徒の行為を認め、「ありがとう」や「○○してくれてうれしい」などの声かけをしていきましょう。
・不適切な注目行動(大声をあげる、挑発する等)ではなく、きちんとできていることに注目し、声かけをしていきましょう。
・よいところを見付けて声かけをする「ヨイ出し」をしていきましょう。
・生徒の挑発にのらず、冷静に対応していきましょう。
・生徒の成長を信じ、取り組んでいきましょう。

 

七 授業について

・できるものに少しずつ取り組ませ、できた経験の積み重ねで達成感を味わわせましょう。
・結果ではなく、取り組みの過程に注目し、認めていきましょう。
・得意なところ、強いところをさらに伸ばす指導を心がけましょう。
・授業は基本的な生活習慣やけじめを身につける場です。発言する際は、自分の意見をしっかり言い、人の話をしっかり聞き、笑わない姿勢を育てましょう。また、分からないときはだれかに聞くことができるということが生活していく上でとても大切です。あいさつ、返事、片付けが自分からできるよう、声かけしていきましょう。
・指導に従わないときは、「やってごらん」などと冷静に言葉がけを続けましょう。追い詰めてしまうのではなく、冷静な言葉がけを続けていきましょう。そう見えなくても、何をしていいかわからないのかもしれません。できそうなことを提案してみましょう。
・目の前の課題の答えを出させることが目的ではなく、課題に対する意欲、最後までやり抜く根気と努力、自分の課題に最後まで取り組む責任など、授業を通じて「将来の社会的自立に必要な力」を伸ばしていきましょう。単なる結果、正解、不正解にこだわらない指導を心がけましょう。

 

八 学級での生活

・朝は「おはようございます」、帰りは「さようなら」と、大人が積極的に声をかけ、挨拶をするようにしましょう。
・交流にいく際は、大人が積極的に「行ってらっしゃい」、「おかえりなさい」と言いましょう。
・自分で時計を見て、時間を守った生活ができるように支援しましょう。
・個人の持ち物と学級の物の区別を明確にしましょう。

 

九 その他

・まずは、生徒との人間関係作りが大切です。
「疑わない」、「責めない」、「皮肉を言わない」のが、生徒との関わりのポイントです。
・学校の基本は「授業」であることを常に心にとめておきましょう。1時間1時間の「授業」を大事にしましょう。「授業」は先生の話を聞く時間ではなく、生徒が自ら学び成長していく場です。不十分な教材研究、過剰な余談は避けましょう。
・学校の教育活動にはすべて「生徒を育てる」という目標があります。その指導、支援が、生徒の成長にどう役だったのか、常に、指導、支援を振り返りましょう。

 

参考

・金沢信彦 岩井俊憲「今日から始める学級担任のためのアドラー心理学 勇気づけで共同体感覚を育てる」図書文化社 2014

・岩佐嘉彦 松久眞実「発達障害の子どもを二次障害から守る! あったか絆づくり ―問題行動を防ぐ!ほめ方・しかり方・かかわり方―」明治図書 2012


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