インクルーシブ教育の方向 神奈川県のインクルーシブ教育実践推進校について

神奈川県では、この夏、2回にわたって「インクルーシブ教育推進フォーラム」が開かれました。

何年か前も参加したのですが、今年も時間があったので、7月の海老名で開かれた会に参加しました。

神奈川県では、障害のある子を普通の高校に受け入れる「インクルーシブ教育実践推進校」と言う仕組みが始まっています。

現在は、茅ヶ崎高校、厚木西高校、足柄高校の3校が、パイロット校として、受け入れをスタートさせています。

現在は、それぞれの高校がある地域の中学校と高校が連携しているシステム(連携募集と呼ばれます)ですが、いよいよ全県展開する高校名がそろそろ発表され、全県の希望する現中1生が進学できるような体制になるという話です。

フォーラムでは、実践されている高校の先生が話をしてくれました。

入試は、他の受験生のようなペーパーによる入学試験ではなく、面接が中心のようです。

入学後は、連携募集の生徒も、他の生徒と一緒に、同じ教室で学習します。複数の先生が授業を受け持ったり、必要に応じて個別に教えてくれる体制があったりするそうですが、基本的には同じ授業を受けるようです。

中には、部活動に入部して活動している生徒もいるようです。

まだ、高1、高2のみの在籍なので、進路についてはこれからです。この点は、きちんと見ていかないといけないようです。

中学校で今、特別支援学級にいる生徒たちが、それを望んだ場合を考えました。

特別支援学級では、必ずしも、中学校の教科書を使っているとは限りません。生徒一人一人の実態に応じて、あるものは小学校の教科書の内容を学び、あるものは中学校でも下学年の教科書の内容を学んでいます。

高校の授業は、当然中学校の内容の上に立ったものでしょう。中学校の内容を学んでいない彼らにとっては、とても難しいのではないか、と思います。

神奈川県のパンフレットには、「神奈川県では、すべての高校において、テストの点数だけで評価(成績)が決まることはありません。また、連携募集により入学した生徒は、先生と一緒に個別の計画を作り、一人ひとりの目標に向けて学習していきます。先生たちもサポートしてくださるので、毎日学校に来て、しっかり取り組む気持ちがあれば、進級や卒業については心配いりません。」とあります。

成績の問題ではなく、その授業にいることが、その子にとってどうなんだろう、と思います。

中学校の基礎がない上に学ぶ高度の内容が話されている授業を、苦痛と感じないだろうか。その時ヒントや答を教えてもらったとしても、その場だけ教えてもらうことに価値があるのだろうか。

その生徒の学習に対する特性が、その高校に行くかどうかという適性と、大いに関わってくるように思います。

そして、進路です。

特別支援学校の進路のように、障害者枠の就労を目指すのであれば、長期にわたる職場実習が必要になると思います。特別支援学校は、何週間もやってると思います。それも何年も。

でも、高校では夏休みなどを使うしかないのかもしれません。実習期間が不足するから、障害者枠の就労は難しいのではないかという危惧があります。

今の時代は、専門学校や大学への進学も、希望すればできるのかもしれません。その後は、一般の人と同じ就職です。

本人の大人になった姿、将来の進路も考えた上で、希望しなくてはいけないところだと、つくづく感じます。

現代の超高齢社会において、高齢者、障害者を含めて様々な立場の人たちが共に生きる共生社会の実現は、必ずやらなければいけない問題です。

それを受けてのインクルーシブ教育は、絶対行わなければいけない教育です。

大切なのは、普通の、学校で言えば通常の学級にいる生徒たちです。彼らが、弱い立場の人たちも含めて、すべての人に対して尊厳を感じ、思いやりを持つ姿勢を持つこと。

かわいそうなどと言った、上からの考えではなく、同じ仲間として支援級の生徒たちと、手を携えて、対等な立場で生活していこうという姿勢。

いじめなどせず、お互いに認め合い、協力する姿勢を持つ。

そういう姿勢を育てることが、インクルーシブ教育なのだと思います。

このインクルーシブ教育をすすめるひとつとしての、今回の神奈川県の取り組みととらえると、何かが見えるように思います。

実際、神奈川県では、この「インクルーシブ教育推進実践校」の取り組みと同時に、小中学校で「みんなの教室」という取り組みを行っています。

神奈川県のパンフレットによれば、「障がいのあるなしにかかわらず、すべての子どもができるだけ通常の学級で共に学びながら、必要な時間に適切な指導を受けることができる別の場で学ぶしくみであり、その教室のことを「みんなの教室」といいます。」ということです。

まずは、勤務する学校で、できることをやっていくことなのでしょう。

いつも同じところにたどり着くような気がします。

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