特別支援学級での校外学習7

ある中学校での特別支援学級の校外学習の実践、7回目。

前回は、校内で練習をした話でした。

ここまで、事前学習に多くの時間を費やしたのは、当日は生徒自身で行動してほしい。生徒自身の力で行って帰ってくる、そういう成功体験を積ませたい。そんな教員の願いからに、他なりません。

そして、いよいよ、校外学習当日を迎えます。

いつも通りの登校時間に、学校に登校。教室で「出発式」をしました。

いよいよ出発。ここからは、生徒のリーダーを先頭に立たせました。教員もリーダーの近く、集団の先頭近くにいますが、基本的には生徒に任せる姿勢で臨みました。その他の教員や介助員は前方、中程、後方など、生徒の間に入りながら、生徒のまとまりがばらばらにならないように声をかけ、安全に十分注意する態勢をとりました。

生徒を先頭に立たせ、進む方向も生徒に考えさせました。学校を出て、右に行くのか左に行くのかというところから、生徒に任せました。リーダーや3年生の班長が中心になって、全体が進むべき方向を決め、引っ張っていきました。こうして、先生が連れて行くのではない、生徒自身が自分たちで行動する校外学習がはじまりました。

バス乗車では、練習通り整理券をとり、降りる時には何人かは近くで見守る必要がありましたが、自分で運賃を支払うことができました。
バスを降りたら人数確認が行われ、リーダーに報告。全員がそろっていたらリーダーは先生に報告しました。練習通り、みんながそれぞれの役割を果たします。

駅での切符の購入も、近くでの見守りは必要でしたが、何とかみんな自分で購入できました。
ホームへの移動、乗車、乗り換えなども、リーダーの生徒と他の3年生が、自分たちで表示を確認しながら全体を引っ張ってくれたおかげで、うまくできました。付き添いの教員と介助員さんは、はらはらしながらもじっくり見守り、生徒たちの力で行動できるよう、サポートしました。

目的の駅に到着。ここからどちらの方向に行けばいいのか。もちろん生徒は誰も分かりません。リーダーと3年生が、地図を見ながら話し合い、こっちだろうと、歩き出します。生徒の動きに大人がついていきました。

そして、遠くに水族館が見えてきました。

やった!! 生徒の力で水族館に到着できたのです。

水族館の中は班行動。
各班ともに班長を中心に、見学して回ります。教員と介助員は、それぞれ別れて、班の後から見守りました。
いろいろな生き物を、生徒たちは食い入るように見つめていました。やはり、実際の生き物はインパクトがあるようです。支援級の見学先にはふさわしいのではないでしょうか。
班によって、スピードはまちまちでしたが、全体的にゆっくり見て回っていました。

昼食は、軽食コーナーで購入し、イルカショースタジアムでとりました。

軽食コーナーでは、一人ひとりが店員に自分が注文するメニューを言い、お金を支払います。外食や弁当を買うということも、大切な経験だと思います。以前の学校で校外学習を行った際も、弁当持参ではなく外食としていました。
今回はその軽食コーナーで食事をせずに、午後から始まるイルカショーの席取りも兼ね、イルカショースタジアムまで食事を持って行き、そこで食べました。

食事の後、少しの時間をおいて、イルカショーが始まりました。
多くの生徒は水のかかる場所までわざわざ行って、体中で感動していました。イルカショーは、大きく盛り上がりました。とても印象的な体験になったようです。

午後は残りの場所を見学した後、売店で、それぞれがお小遣いを使っておみやげを買いました。買い物学習の応用ができました。それぞれが自分で商品を選び、自分で支払うことができました。教員と介助員は、店内をまわりながら、生徒に声をかけました。普段お世話になっている人たちにおみやげを買う者もいました。生徒のそんな大人っぽい心配りを感じることができた瞬間でした。

帰りも生徒中心で移動しました。

学校最寄りの駅に降りてから、バス乗り場を探すのが少し難しかったのですが、しおりに何番乗り場か記載されていたので、それを見て自分たちで探し当てました。

学校近くのバス停で降り、その近くで「解散式」をしました。

生徒たちの力で、学校から水族館まで行って、帰ってくることができたのです。

みんな疲れた様子でしたが、自分たちの力で行ってきたという満足した表情が読み取れました。

あのころ、日常の学校生活では、勝手な行動、暴言、暴力なども頻発していた状況だったのですが、あの校外学習当日は、教員が大きな声で指導する場面はほとんどありませんでした。暴言や暴力も、ほとんどありませんでした。それぞれの生徒が、リーダーの指示に従い、自分の係の仕事をし、班で協力して活動しました。いつも場を乱しているような生徒もです。ケンカではなく、他の生徒と協力していたのです。校外に出るということは、学校では学べないものを学ぶことができるのだなと、再確認した瞬間でもありました。

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