特別支援学級でのクラス会議2

クラス会議の実践は、3学期からスタートし、次の年度も4月から続けました。

この年度は、毎朝の「クラス会議」を学級の指導の中心に位置づけました。

一日を「ありがとう」から始めることで、落ち着いた学級にしていこう、というのがねらいです。

 

「クラス会議」を継続し、実践を積み重ねていくにしたがって、おしゃべりや暴言は減少していったように思います。

生徒によっては、学校に来る前に起きたトラブルを引きずって、「クラス会議」の輪に入っても不安定で、場を乱すようなこともありました。

それでも、「クラス会議」の積み重ねは、それぞれの生徒にとって「心地よい経験」になっていったのではないかと思います。

 

○ありがとうみつけ
さて、最初に行うのが「ありがとうみつけ」であると説明しました。

前年から在籍していた生徒たちは、だいぶ「ありがとう」が言えるようになっていたので、最初はとまどう様子が見られた新しく入学、進級した生徒たちも、やがては「ありがとう」を言えるようになっていきました。

なかにはいつもパスをする生徒もいましたが、まわりの生徒が何かしら「ありがとう」を言い、輪の中の大人も「ありがとう」をその子に言うことで、いつも言わない生徒もやがて言うようになっていきました。

 

○議題の話し合い
「ありがとうみつけ」の次は、「議題の話し合い」です。(議題がない時は、「ありがとうみつけ」を逆回りで実施することにしていました)

前年に作成した議題箱と記入用紙を、引き続き教室に置いておきました。あまり積極的に議題が入れられたとは言えませんでしたが、時には授業中に書かせたり、教員が自分で書いて入れたりしたこともありました。何人かの生徒は、思いついた時に議題を書いて入れてくれました。

実際に議題箱に入っていた議題には、次のようなものがありました。

・教室に、悪いことばやチクチクことばが、いっぱい聞こえています。ふわふわことばが増えるには、どうしたらいいですか?
・どうやって 仲良くすればいいの?
どうやって けんかしないの?
・暴力をする人がいます。どうしたらいいですか?
・いいクラスにしたい。どうしたらいいですか?
・みんなと仲良くしたい。どうすればいいですか?
・どうやって仲間にやさしくできるの?
・なぐりたくないのに、なぐりそうになったり、なぐってしまったりするんですけど、なぐらないくせをなくすには、どうすればいいですか?
・うるさい人がいます。いつも授業中に話してます。どうしたらいいですか?
・最近ちょっとふとったんですけど、どうすればいいですか?
・うるさい人がいたら、どうすればいいですか?
・ケンカをしないには、どうすればいいの?
・さいきん、言葉づかいの悪い人がいます。どうすればいいですか?

 

これらの出された議題から、教員が一つ選び、板書します。

そして、その議題に対する意見を、順番に言っていくこととなります。

例えば、「暴力をする人がいます。どうしたらいいですか?」という議題に対し、
「優しい言い方をすればいい」
「すぐあやまる」
「暴力はしません。がまんします」
などの意見を思い思いに言っていくのです。

時間は限られていますので、思いつかない生徒はパスしていいことにしてあるのは、「ありがとうみつけ」と同様です。

この会議の中で、暴力をする生徒も、平然と「暴力をしないように気をつけた方がいい」などと正当な意見を言うことが多くありました。

自分のことを言われていると怒り出すようなことはなく、逆に、正しいことを考えようという様子が見られたのです。

自分の行動を級友の意見から振り返っていく機会になったと言えると思います。

そう考えると、この「クラス会議」は、たいへん意味のある取り組みだったと思います。

時間になったところで、意見は打ち切りました。

どの意見がよかったかと、教員が聞いて、良さそうな意見を二つか三つくらい選んで、クラス会議は終了としました。

「今日は積極的に意見が出たね。嬉しかったよ。ありがとう」などと、教員が感想を述べてしめました。

教員はその後、議題と最後に選んだ意見をワープロで打って印刷し、教室に翌日掲示し、その場限りの話し合いにならないよう心がけました。

 

○クラス会議の意義
一日の初めを「ありがとう」という言葉でスタートすると、私たち教員もやさしい気持ちになれました。生徒たちも同様だったと思います。

また、クラスの問題点(暴力、言葉遣い、協力等)が議題として子どもたちから出て、それを話し合うことで、少しでも自分たちの生活をよくしていこうという気持ちにつながったのではないかと思います。

毎日継続した積み重ねは、少しずつ生徒の心を育てていたことと思います。

いつも暴言ばかり言う子が、クラス会議を続けていく中で、自分の番が来たら必ずどんな小さなことでも「ありがとう」と相手に伝えている様子が見られました。たとえ暴言や暴力をしてしまう生徒であっても、心の底では他者とつながりたいと思っている。だから、「ありがとう」と言っているのだと思います。日常の場面で、その生徒が「ありがとう」と言っている姿は、あまり見たことがありませんでした。ということは、このような場面設定がとても大切な意味を持っていたということになるのだと思います。

相手にどんな「ありがとう」を言おうか一生懸命探す子も、多くなりました。そういう時は、「みんなが隣の人のありがとうを一生懸命見つけようとしていて、とても嬉しかったよ。ありがとう」と最後に教員も感謝の言葉を述べました。

日常の中でも、教員は「ありがとう」という言葉を何回も使うようにしました。

 

 

インクルーシブ教育を考えた時、交流級の中でいかに特別支援学級の生徒たちが人間関係を作っていくかという点が重要だと思います。

ですから、このように特別支援学級の中で対人関係的なスキルを学ぶ場はたいへん重要なのだと思います。

特別支援学級で小集団での生活を学び、それを交流級の中で生かしていく。ひとつのインクルーシブ教育における指導ではないかと思います。


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