学校再開後2ヶ月 8月を迎えた特別支援学級と中学校の現状

新型コロナウイルス感染防止のための休校措置が解除され、学校が再開しておよそ2ヶ月が経ちました。

本来なら、夏季休業期間であるはずの7月後半も、依然、1学期が続いています。勤務校のある自治体は、中学校の1学期終業式を8月7日(金)に設定しています。あと、ちょうど1週間と言ったところです。今年は梅雨が長く続き、7月は雨の日が多くありました。豪雨災害が国内各所で起こっていますが、運良く、勤務校の近くは災害は起こっていません。雨の関係で気温もいつもの夏のようには上がらなかったので、比較的過ごしやすかったということもできます。その点、1学期が延長され授業を受ける生徒も、授業を行う教員も、やりやすかったのではないかと思います。例年の夏のような7月中旬からの猛暑が起こっては、学校はさらに混乱していたことでしょう。

意外に思うのは、勤務校の特別支援学級では、この夏休みが先延ばしになっていることに、不平不満を口にする生徒が見られないことです。もちろん、聞こえないところで言っているのかもしれませんが、新しい状況、普段とは違う日常を大方受け入れて、8月を迎えることができているようです。変化が苦手な生徒もいるのですが、このように世の中全体とした状況の変化にあたっては、対応できるのかもしれません。学校再開の前にあった休校自体が大きな変化でしたので、そこから考える必要があるのかもしれませんが。

ここまで書いてきて、勤務校の生徒の一人ひとりの顔を思い浮かべてみると、授業中に寝てしまう生徒、落ち着きのない生徒がいることが思いだされます。表面的な状況だけではなく、個々の状況を十分把握する必要が、さらにありそうです。

さて、勤務校の校長は、もともと教員の働き方改革を提言されている方なのですが、先日、こんな事を言っていました。

「先生方の時間外勤務ですが、休校期間中は過労死ラインと言われる月80時間を超えている人はいませんでした。しかし、6月は多くの先生が月80時間を超え、中には100時間を超えた人もいます。6月は部活動がなかったにも関わらずです。部活動が始まった7月の集計ではどんな状況になるか。とても心配しています」

私の実感も同じです。勤務校では特別支援学級の教室の近くに専用の小部屋があって、そこに私の校務用のパソコンがある関係で、主にそこで仕事をしています。以前もこのブログで書いたのですが、休校期間中も仕事が多く、勤務時間の5時を過ぎて、6時ころになってしまうことが多かったのですが、職員室に戻ると多くの先生方が帰られているという現状がありました。休校期間中は、全体として、先生方は勤務時間で仕事をされていたのです。

その先生方の退勤が、学校再開の6月に近づくに従って、全体的に遅くなっていくのが、実感として見て取れました。学校が再開してからは、6時、7時になっても、多くの先生方の姿が職員室には見られました。先に引用した校長の言葉にある通り、「部活動がなかったにも関わらず」です。

分散登校だった6月最初の2週間は、午前と午後に授業をやり、休校期間中の様子を確認する「臨時教育相談」を午前と午後の授業のあとそれぞれ行い、新しく増えた「生徒下校後の消毒作業」に取り組み、多くの先生方が職員室に戻るのは、勤務時間の5時ころだったでしょう。その後、つまり勤務時間後、先生方は提出された生徒が取り組んだ課題の採点やら、次の授業の準備やらに取り組んでいました(他人事ではなく、私もそうでしたが)。久しぶりの授業である生徒への対応の工夫と、休校の影響で授業をどんどん進めなくてはならないという義務感が、今まで以上に、先生方の「授業へのやる気」を高めていたのではないかと思います。

そうやって2週間すぎ、6月中頃からは通常登校が再開しました。やがて、生徒会活動、委員会活動といった生徒活動も再開します。放課後は、1学期に本来計画されていた「定期の教育相談」が入り、また「放課後の学習会」も始まります。この「放課後の学習会」は、本来は月1〜3回程度計画されていたものなのですが、長期休校の未履修分の補填、休校の影響もあって学習に十分ついていけないような生徒のために、週2、3回というペースで組み入れられました。その上で、前述の「消毒作業」が行われます。勤務校を設置する自治体からは学校再開後の方向性が出されていたので、年間計画の組み直しが行われ、それに伴って、新しく立て直した年間計画の中で分掌上の行事をどう組み込んでいくかという分掌会議もさかんに開かれました。例えば学校祭をどう設定し、それに向けた取り組みを具体的に、いつ、どうするかというところを詰めていったのです。もう、だれも勤務時間で仕事を終わらせることなどできません。

このように、学校再開と同時に、先生方の勤務は「超多忙」なものへと移行していました。これでは、過労死ライン時間外勤務月80時間を超えるのは、当たり前のことでしょう。

そういう中で、ついに7月からは部活動再開となるのです。放課後は、前述の通り「定期の教育相談」や「放課後の学習会」「消毒作業」があります。その間隙を縫って部活動を行おうというのです。自治体からも、週2回以下という方向が出ています。校長や各学年主任等からなる企画会では、「放課後の学習会」と部活動の同日開催は無理だろうという方向が出されたのにも関わらず、部活動を管轄する分掌は無理やり職員会議でゴリ押しするような方法で、「放課後の学習会」を実施する日も含めて週2回の部活動の時間の確保を行いました。生徒が望んでいるから、生徒がやりたがっているから、3年生にとっては最後の機会だから、と、もっともな「お言葉」に、結局、多くの先生方が承諾し、管理職も認めてしまいます。

その結果、先生方の放課後は、とてつもなく多忙を極めるものになってしまいました。教育相談、学習会、部活動、消毒が終わり、勤務時間を大幅に過ぎて職員室に戻った先生方は、授業課題の採点をしたり、授業準備をしたり、中にはそれから分掌会議をしたり、担当者は消毒用の物品の補充点検も行ったりしています。学校が始まって、生徒たちは様々な問題を抱え、トラブルも起きます。親を呼んでの指導や生徒情報の情報交換などもいたるところで行われました。7時近くになって職員室を除くと、昼間と同じように先生方が仕事をしています。何をしているのだろうと、なんとなくPCをのぞくと、授業プリントらしきものだったりします。やらなければいけないことを、勤務時間を大幅に過ぎた時間にやらざるを得ない状況があるようです。

今週、全く別々の場所で、仕事が多すぎてやる時間がない。部活動などやりたくはないのに。というような声が聞かれました。

考えてみると、たしかに自治体や校長の方針はありましたが、放課後、教育相談、学習会、部活動、生徒活動を行うことは、先生方自身が了承してきたことなのです。ここにあげた放課後の4つの活動がなかった休校期間中さえ、私は勤務時間内にすべての仕事を終えることができませんでした。他の先生も、多少、似たところはあったのかもしれません。仕事を増やしてきたのは、教員自身の責任もあるのではないかという気もします。もちろん、そういう状況、反対する状況じゃないなどとの反論、子どものためだからという反論もあるとは思いますが。でも、働き方を考えるのであれば、この休校期間というのは、大きなチャンスだったように思います。もとの仕事量に戻してしまった。それ以上に、丁寧に仕事をしようなどと考える状況で、教員の仕事は、更に膨大なものになってしまいました。

子どものためという「お言葉」、全体の方向に、いち教員が反対するのは、難しい状況があります。そう考えると、管理職のリーダーシップが必要なのかもしれません。それとも、いち教員が、集まった先生方が、行動すべきということなのでしょうか。

末端の、ヒラの教員として何ができるのか。

できることであれば、自分の近くの仕事から、減らしていけるものは減らしていくことだと思います。自分自身、できていません。特別支援学級は、一人ひとりへの対応が違うので、授業準備もそれぞれに合わせなければなりません。そういうことも、なんとかある程度のパターン化ができないか。そうすることで、授業準備の時間が減るのではないかなど、取り組もうとしていますが、十分ではありません。この点をさらに今後検討していきたいと思います。ただ、これを頑張ろうとすると、私の勤務時間が増えてしまうという、パラドックスに陥ってしまいますが。

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