中学校特別支援学級生徒の教科交流を考える

「ある中学校の実践」の中で、音楽と体育の教科交流について、紹介しました。

中学校で、他の教科の交流は、どう考えればよいのでしょう。私の考えを今回はお話しします。

 

まずは、本人の希望です。

 

本人の希望は、大切にしてあげたいと思います。

交流授業を受け、楽しく学習できる場合もあれば、理解が難しい場合もあるかもしれません。適切に交流する授業を本人が選ぶことができるように、学校も保護者も、普段から子どもとコミュニケーションをとって、どんな勉強がしたいのか、将来どうしたいのかなど、話し合っていく必要があるのだと思います。

 

次に、進路をどう考えるかです。

 

通常の高等学校への進学希望をし、そのために中学校の教科書を使った教科学習が必要なのであれば、行けるところは、教科交流をしていくことも考えられるのではないかと思います。

ただ、すべての教科を交流したいというのであれば、学級生活の面、学級内での人間関係づくりの面などを考慮し、通常の学級に在籍した方がいいのではないかと思います。学校の立場で考えると、いわゆる「全交流」は、あまり利点のないものと思います。在籍だけの特別支援学級よりも、通常の学級に在籍してそこでの関係を築いた方がいいのではないかと思います。

 

進路について、特別支援学校やサポート校などを希望し、中学校の教科書の内容で入学試験を受ける必要のない場合は、その教科の交流がどんな意味があるのかを考えていただいた方がいいと思います。

音楽、体育以外の授業交流では、多くの場合、同じ教室の中にいても、他の生徒とのかかわりは少なく、個人での学習、作業になると思います。(この点が、小学校での交流と中学校での交流の大きな違いだと思います。小学校の時に交流したから中学校でも、と同じに考えられないところもあると思います)これでは、交流学級の生徒たちと実際に「交流」する機会がほとんどなく、交流学級生徒とのふれあい、つながりという点からは、あまり意義のないことと思います。(「交流」できるのは家庭科の調理実習くらいでしょうか)

近年話題のアクティブラーニングなどによって、「交流」する場面が増えることも考えられますが、そこで要求されるのは、自分の意見を発表したり、だれかの発言をもとに考えを述べたりと、認知面の能力が求められます。できる生徒にはいいと思いますが、多くの特別支援学級の生徒にとっては不得手の部分ではないかと思います。

また、交流教科が増えると、その分、特別支援学級での学習時間が減ります。

特別支援学級では、「個別の指導計画」が作られ、その生徒にあった学習内容が授業の中で取り組まれています。また、「特別支援学校学習指導要領」を参考に教育課程が編成され、授業の中で、その生徒の障害に基づく種々の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識、技能、態度及び習慣を養う「自立活動」の指導が行われています。場合によっては、40人の通常の学級で授業を受けるよりも、特別支援学級の方が断然先生の目が行き届き、有利になる場合も考えられます。

交流が増えることで、そういう大切な個の学びの時間が十分とれなくなってしまいます。せっかく特別支援学級を選び、その生徒にあった学びの機会が提供されるというのに、それを十分利用することができないというのは、もったいないのではないかと思います。特別支援学級を選んだということは、特別支援学級で個別の目標に沿って学ぶことが必要なところもあるということだと思います。その機会も設けておく必要もあるのではないかと思います。

 

私の実践の中でも、本人や保護者の希望があれば、教科交流もしていただいていますが、どんな意味があるのだろうと、考えさせられる事柄でもあります。個別の学びと中学校の教科学習のどちらが大切なのか、それぞれの生徒で比べて考える必要があるのかなと思います。

これをご覧いただいている保護者の方がいらっしゃいましたら、ぜひ、その教科交流が、個の学びの時間を減らしてまで、する必要のあるものなのか、考えていただければと思います。その時、将来のお子様の姿を思い描いていただければと思います。お子様の将来に向けて必要なのは、歴史の授業を受けることなのか、特別支援学級で生活の基本を練習することなのか、どちらなのだろうか、ということです。

本人、保護者、学校の三者で十分話し合っていく必要がある問題だと思います。

 

インクルーシブ教育の時代です。すべての授業を通常の学級で受けるべき時代なのかもしれません。通常の学級の授業の中で、個別の対応をしていかなくてはいけない時代なのかもしれません。しかし、多くの学校ではまだそういう学校態勢ができてないように思います。このことについては、今後の課題としておきたいと思います。



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